Secret Secretとして「World ELE-POP Festa 2001」に出演した通称ロブことRobert Blaqueさんに登場いただきました。日本語表示も一部ある電気虎というレーベルも運営している、日本通のゴス系アメリカ人です。なお、インタヴューは英語を出来るだけ本来の意味に近くなるように日本語に訳しています。
Buggle San: Secret Secretというバンド名の由来は?
Robert: 名前自体はあだ名として選んだわけで、本来以上の意味を持っています。全ての人は暗い部分があります。彼等の影の部分は他の人達とは共有されないものです。Secret Secretとは、その事です。隠された人の魅惑。閉じこもった人。この人は僕達、でも僕達は誰かが何処かで僕達のSecret Secretを本当に見つけ出す事を恐れて、抑制された環境で僕達のパーソナリティのこの部分を社会に対して隠します。僕がステージにいる時、僕はその象徴です。
Buggle San: あなたのサウンド志向をどのように定義しますか? 新しい世代のダークウェイヴですか?
Robert: サウンドや音楽にレッテルを貼る事は変な感じで、アーティスト達はレッテルを貼られる事を避けようとしています。でも、それはファンがアーティストを見つけ出すプロセスで、実際のところ重要な問題です。僕はダークウェイヴ、シンセポップ、ゴス、ハウス、インディーズ、好きなように呼んでもらって構いません。自分達はダーク・シンセポップと呼ぶ事が多いですが、ファンが僕達の音楽を見つけてくれる限り、どのように呼ばれるかは気にしていません。
Buggle San: 日本がとっても好きみたいですね! どうしてですか? 日本のポップ・カルチャーに関して特に好きな物はありますか?
Robert: はい。でも理由はないようで、たくさんあったりします。僕にとって日本はヴィデオ・ゲームのようです。全くもって超現実的です。ダリの絵画の中に入り込んだようにね。全てが逆転しています。車は道路の反対側を走ってるし。動詞は最後に来るし。言葉はひっくり返ってるし。最も単純な事でさえ日本では、僕にはチャレンジです。赤い扉への青い錠はどこに。とても興味がそそられて、僕の脳のクリエイティヴな部分をオーヴァーロードさせます。アーティストとして一度に3週間以上はちょっと無理ですが、その3週間はファンタスティックです。
Buggle San: 特に好きな日本のアーティストは?
Robert: 多くの好きな日本のアーティスト達がいます。もちろん、シンセ系バンドに興味が大ですが、ヴィジュアル系やつんく♂系にまでも惹かれます。つんくの大ファンで〜す。多くの人達は彼について厳しい発言を僕にしますが、つんく♂のプロダクション・チームは彼等の音楽を解っていると思います。ポップ・カルチャーの嗅覚でとってもクールなものをこっそり持ち込んでいます。大変、感心します。フェイ・レイも熱いです。
ヴィジュアル系バンドが好きなのはファッション・センスからです。とってもクールな衣装と化粧をしています。でもステージ上だけでのファッションなのでゴスの人達とはまた違います。彼等はステージから離れるやいなや服を脱ぎます。ゴスの人達はもっと長い間コスチュームに身をまとっており、実際に街でも同じ格好をしています。ヴィジュアル系バンドには、その傾向はあまり見受けられません。でも、髪型から彼等を見分ける事が出来ます。髪はいつもとてもフラットで、ほとんど同一のカットと色をしています。だから、衣装と化粧が無くても、鍛えられた眼には誰か判るのです。
TM Revolutionも尊敬しています。「HEY! HEY! HEY!」で松ちゃんと浜ちゃんに対抗した唯一の奴です。時々、彼等は本当に意地悪で、テレビで泣かされて人も見たことがあります。でも、TMはいじれないように素早く対応しています。クールです。超かっこいい。
Buggle San: ロブさんに初めて会った時、モー娘。の『LOVEマシーン』のビデオをロブさんが持っていた記憶があります。気に入りましたか?
Robert: 素晴らしいと思いました。ばかげたCGでかわいい日本の娘が『Venus』のヒット・ファクトリー版にあわせてジャズダンスのレッスン1を踊っている。とっても素晴らしいポップなものとでも言っておきましょう。
Buggle San: 遂に10月19日にサエキけんぞうさんが主催した「World ELE-POP Festa 2001」にて日本でのショーが実現しましたね。長年の夢がかないましたね。どうのように実現させたのでしょうか?
Robert: 長い話になります。ミルクのLuliを通してゴージャラスというバンドを紹介してもらいました。彼等は僕がけんぞうに会う事になった、千葉でのけんぞうの「Drive from 2000」というイヴェントに招待してくれました。僕達は連絡しあっていて、僕が来日できる準備が整った時、彼はショーをオーガナイズしてくれました。これが「どのように実現した」の短縮版です。
Buggle San: サエキさんがイヴェントでのラスト曲『にちようび』でステージに参加されましたね。あの曲は、特に観客へのアピールが強かったですね。日本語のヴォーカルをダークウェイヴ・サウンドにミックスする事によって、とてもオリジナルなものが出来上がっていますね。
Robert: ありがとう。けんぞうがステージに参加してくれた事はとても光栄です。実際、自分達だけのサウンドを作るために努力しました。でも、本道から外れすぎることもできません。『にちようび』はフレンチ・アクセントで日本語がどのように聴こえるかという僕のファシネイションから生まれたものです。ずっとずっと〜。
Buggle San: 日本の観客の前で日本のサポート・メンバー(ひろみさん&まさみさん)とのパフォーマンスした感想は?
Robert: ひろみ(左の女性)とまさみ(右の男性)と一緒にできて素晴らしかったです。僕のアメリカのツアー・メンバーは日本へ来る事が出来なかったので、「キーボード・マガジン」にいる友人のイッコが僕にまさみを紹介してくれました。まさみのシンセ・ミュージックのコレクションは信じ難いほど凄いです。このタイプの音楽に多くの人達を知っていますが、彼ほどのものを見たこと無かったです。
Buggle San: このイヴェントに出演したラインアップはとても多様でしたね。いっしょに出演したアーティストに関してどのように思われたでしょうか? 特にお気に入りがあれば、教えてください。
Robert: イェー、僕は最初はちょっと心配でした。けんぞうのバンドとSecret Secret以外は全て女性がフロントのバンドでした。だから、その様な状況下で僕達が受け入れられるか分かりませんでした。でも、一緒にできてラッキーでした。
お気に入りについてはみんなグレートでした。僕は女性ヴォーカルの大ファンで、あの夜は意義深いです。Mamiko、(宍戸)留美、トモコ、(早瀬)優香子に全てのバックアップしたシンガー達、最高のラインアップでした。けんぞうはこんな良いショーをやってくれて凄いです。参加したみんながWINNERでした。けんぞうはグレートで彼のKISSのカヴァーを思わず口ずさんでしまいました。楽しい思い出!
Buggle San: 僕は見に行く事ができませんでしたが、Secret SecretはThe Auto Mod、Neurotic Doll他と共に「Tokyo Goth and Darkwave Night」というゴス系のショーにも出演しましたね。どうでした?
Robert: 英語で「ヲタク」のような言葉はありません。「ナード(Nerd)」と言う人もいますが、僕が考えるには同じとは言いがたい。興味の対象に「はまっている」という意味で、あいつは「イントゥー・イット(into it)」とか言えるかも知れませんが、英語ではその辺が限界でしょう。何かの興味を持っていこうと決心した時、本当に「はまっている」日本人がいますね。「Tokyo Goth and Darkwave Night」は、その典型でした。
聴衆は、僕がアメリカで見かけるほとんどのゴス&ダークウェイヴ系パフォーマーよりも本格的な衣装をまとっていました。ちょっとビビリました。僕のお化粧とステージ衣装がそこそこイケテいるかどうかちょっと疑心暗鬼。同時にそれはファンタスティックでした。その夜、僕は100回の恋に落ちるほどでした。
本来の質問である一緒にプレイしたバンドに関してですが、全部見れませんでした。Auto Mod(写真下左)のショーを見に行くのは実は2回目なのですが、また彼らを見逃してしまったことはとっても残念でした。Neurotic Doll(写真下右)を見て、彼等はグレートでした。驚くべきヴォーカルに印象が強いステージでの存在感。チャンスがあった時に、彼等のCDを手にいれられなかった事が残念でしかたありません。
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Buggle San: 日本のゴスとアメリカのゴスをどう比較しますか?
Robert: 簡単な質問に答えるのが一番難しいと言うのはおかしなもんです。一般的にゴスは音楽的には大きく広がっています。何よりもファッションがゴスをコミュニティーとして保つ役割を果たしています。その範囲では、ゴスは外観重視です。日本人はそれを手がかりにして、実際にゴスとして素晴らしい仕事をしています。音楽に関しては、僕の聴いた日本のバンドは音楽的にもよりゴスしています。僕が聴いた他のバンドは、Art Marju Duchainです。多分、サタンと言ったものからは距離をおく必要があるのは、彼等に相応しくないと言う理由から来るのでは思われます。でも、彼等の音楽はゴスでいいものです。
Buggle San: 僕もデペッシュ・モードが好きですが、アメリカの多くのネオ・シンセポップ又はダークウェイヴ系バンドはデペッシュの忠実すぎるフォロアーである感があります。
Robert: 言ってる事分かります。シンセポップで成功したバンドの名を挙げて下さい。デペッシュ・モード。もう一つは? 挙げられません。デペッシュのレベルで成功したシンセポップ系バンドは、見当たりません。もちろん、クラフトワークもいます。そして貴方や僕以外にシンセポップにのめり込んでいる人達と一握りのラッパーを除いて、世界はその存在を知りません。彼等がプリンスよりもモダン・ミュージックに影響を与えた事実にもかかわらず。だからシンセポップをして、人々に気に入ってもらいたければ、デペッシュのようなサウンドとなる落とし穴に入り込みやすいわけです。でも、落とし穴なのです。だって人々が好きなのは彼等のサウンドではなく、「うた」なんです。それは、デペッシュのCDで何曲がアラン・ワイルダーによって書かれているを見れば証明できます。
Buggle San: でも前述しましたように、Secret Secretには何かオリジナルなものを生み出していますね。どんなアーティストの影響を受けたのでしょうか?アルバム『The Living Secrets』からの『Metal』という曲からはゲーリー・ニューマンが感じられます。
Robert: 音楽の勉強もしました。音楽の学位も持っています。ソプラノ・サックスやマンドリンも演奏できます。多様な音楽をたくさん聴いています。全ては僕が曲を作る際の選択に影響を与えます。デペッシュと同じくゲーリー・ニューマンにも大きく影響されています。注意深く聴いてみると、デペッシュの影響が聴けますよ。でも、デペッシュのCDの中にある音楽的パレットに縛られていないのでプリンスやベニー・グッドマンの曲も探っていけます。ブルーグラスのコード変更やを入れてみたければ、それも出来ます。そのようなちっちゃな事が貴方が聴く音楽に距離感を与えてくれるわけです。
Buggle San: 貴方が活動基盤としているサンフランシスコにもダークウェイヴ・シーンはあるのですか?
Robert: はい。サンフランシスコにはとても特化したゴス・シーンがあります。毎週の夜に少なくとも一つのゴス系グラブ・イヴェントがあります。全てのクラブがライヴ・バンドでやるわけではありませんが、ローカルのゴスやダークウェイヴ系をプレイします。DJ達はとても協力的です。ローカルのゴス系バンドやDJのためのメーリング・リストもあります。僕達はお互いに連絡しあい助け合っています。とても協力的関係です。
Buggle San: 現在、アメリカにおいてダークウェイヴやシンセポップはどのように受け止められているのでしょうか?アメリカのポップ・ミュージック・シーンにどのようにフィットしていますか?
Robert: 両方ともインディー・ミュージックです。以前そうであったように、チャートに入る可能性はあります。ゴスやシンセポップのためのカレッジやダンス・チャートでは強い存在感を保っています。ブリットニーやクリスチーナの大ヒットはヴォーカルを取ってしまえばシンセポップにとても近いです。だから、世界はまだ開かれていると思います。ダークウェイヴやシンセポップをチャートから遠ざけている一番大きな理由は、ソング・ライティング力にあります。このジャンルにおいて世界が注目してくれるだけの素晴らしい曲が書かれていません。でも、基盤はあるし、いつ実現してもおかしくありません。
Buggle San: 自分自身のレーベル「電気虎」を運営していますね。日本ではレーベルを財政的にうまく運営していく事は簡単ではありません。どうのように運営しているのでしょうか?
Robert: こちらでも簡単じゃないですね。でも、電気はとても小さなレーベルで保守的に運営されています。日本でも僕の友達は同じ手法でやっています。何に対して投資するかの選択にとても配慮が必要なだけです。ミュート・レコードは同じように始まりましたが、彼らは現在、シンセポップの最大のレーベルの一つです。ヴィンス・クラークが事を始めるに当たって最初に彼等に一束の佳曲を書いた事は助けだったでしょうが、小さく始められて、運営者によって気遣いがなされていた事が重要だったと。僕の大英雄の一人はダニエル・ミラーです。ミュートの創始者。この一人の男とシンセポップへの愛情のお陰で、たくさんのクールな音楽が聴く事が出来たのは幸運です。とても感謝しています。
(ご協力ありがとうございました。)